滝沢馬琴の名作・南総里見八犬伝が壮大なSF作品になって復活
今回紹介する作品は『BABEL』です。
この作品は、江戸時代の有名小説家・滝沢馬琴の代表作として有名な『南総里見八犬伝』を『革命ルート163』『スプライト』などで有名な石川優吾先生がアレンジした作品です。
もちろん、今回の主題である『BABEL』ももちろん面白い作品です。しかし原作の『南総里見八犬伝』も本当に面白い作品なので、今回はこちらも一緒に紹介したいと思います。
南総里見八犬伝
歴史書房
まずは原作の『南総里見八犬伝』を紹介したいと
思います。
舞台は戦国時代、安房の国(千葉県南部)。
安房の国を治める領主、里見義実(よしざね)は
隣国の国主・安西景連の侵攻によりいよいよ本城
の落城も間近に迫っていた。
そんな折、義実は飼い犬の八房に対し、「景連の
首を取ってきたら娘の伏姫を与える」と冗談を言
うと、果たして八房は敵陣に忍び込み、安西を打
ち取ることに成功した。その後、義実は伏姫を犬
ごときには与えられん、と八房との約束を無効
にしようとするが、伏姫は一国の君主の一度口に
したことの重みを説き、八房を伴って山に入った。
数年後、山中で読経にふける日々を過ごす伏姫の
もとに一人の仙童が現れ、伏姫に女人の呪がかけら
れていること、読経によりその怨念は解消されたも
のの、伏姫は八房の気を受けて子を宿していること
を告げられる。伏姫はちょうど自分を探しに来てい
た義実と家臣の金碗大輔の前で切腹し、自身が犬の
子を宿していないことを証明する。(このあたり
は出版元によって多少の違いあり。)
その直後、伏姫の体が白い光に包まれ、
仁・義・礼・智・忠・信・考・悌の8つの宝珠が
飛び出し、光を放ちながら八方に消えた。
金碗大輔は伏姫を守れなかったことを後悔して出
家し、消えた8つの球を探す旅に出るのだった ー。
ここから、物語は8つの球を宿した「八犬士」たち
が最終的に合流し、里見家の危機に立ち向かう、
といった流れになります。
主人公が仲間を集めて大魔王に立ち向かう、
よくあるRPGゲームのような流れです。
また、この南総里見八犬伝、個人的には歴史小説の中
でもトップクラスに読みやすい作品だと思います。
歴史小説が苦手な方の中には、登場人物の人間関係
が分かりづらい、どことどこの勢力がどんな関係なの
かつかみにくい、というかたが結構いるんじゃないか
と思いますが、本作品は敵のわかりやすい二項対立、
「正義」と「悪」の戦いとなります。
さらに、物語の長さに対して登場人物の数やその
時代特有の語句などもそこまで多くないので、かな
り頭に入ってきやすいと思います。
実際『南総里見八犬伝』は小学生向けに出版された
物や漫画版も多いですし、読みやすい作品であること
は間違いないでしょう。
次に紹介する『BABEL』を読む前に、先にこちらの
原作から読み始めるのもオススメです。
BABEL
歴史書房
戦国時代、安房の国 。
数年にわたる飢饉に民は飢え、隣国の侵攻により城主
・里見家は滅亡の危機に瀕していた。
そんな折、里見家の姫・伏姫は比叡山を訪れ、千日修
行を終えて神の力を宿した犬・八房の力を借り、
見事隣国の侵攻を退け、敵将・山下定包の妖婦・玉梓
(たまずさ)を処刑することに成功するが、それが
日ノ本を侵略せんとする異国の闇との闘いの引き金で
あった ー。
『BABEL』は先に紹介した南総里見八犬伝のアレンジ
作品なのですが、話の流れや設定がだいぶ違っている
ので、原作とは違った世界観が楽しめる作品となって
います。
この点は前回紹介した『封神演義』とは若干異なる
点ですね。
かといって原作の良さが消えてしまったわけではなく、
読みやすさや見せ場はしっかり残されているのが本作
のすごいところです。
原作の主要な登場人物や戦闘シーンは登場しますが、
原作では出てこない織田信長などの超有名戦国大名
が出てきたり、キリスト教の悪魔が日本に侵攻して
きたり、未来人が登場したり、、、と、SF要素の濃
い作品となっています。
また、原作の南総里見八犬伝では主な舞台は安房の国
をはじめとした関東地方に限られていますが、BABEL
では日本全国は元より、現在の私たちが生きる、作中
から見た未来世界も登場したりと、かなりスケールが
壮大です。
他にも石川先生の別作品『スプライト』で登場した
キャラクターがこの作品にも出てくるので、こちらを
読む前に確認してみるのもいいかもしれません。
終わりに
今回はいかがだったでしょうか?
冒頭でもお話ししましたが、『BABEL』はそのまま読んでもおもしろいですが、『南総里見八犬伝』を読んでから見ると面白さが倍増します。このように史実や原作との違いを確かめながら読めるのが、歴史アレンジ小説の最大の面白さですね。
個人的な感想ですが、石川優吾先生の絵は素朴ながらも躍動感があって好きです。先生の他の作品も、次回以降機会があれば紹介したいと思います。
過去の記事もよろしくお願いします!
歴史書房
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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