2023年2月24日で、ロシアによるウクライナ侵攻からちょうど1年目の節目を迎えます。戦争の長期化が避けられない状況となる中で、改めてウクライナ問題に焦点が当てられています。
今回は、そんなウクライナ出身の方が自身の半生の体験と、故郷の魅力について綴ったエッセイ集『ウクライナから愛をこめて』(作:オリガ・ホメンコ、群像社)について紹介します。
作品のあらすじ
この作品はいくつかの短編からなるエッセイ集です。基本的に筆者と関係の深い人々の思い出や人生について書かれていますが、前半はウクライナの伝統的な農村や家族関係、後半はウクライナの歴史や風土や当時の社会情勢が主な背景になっています。
一つ一つの物語は短いですが、エッセイらしい人間味と暖かい文章の作品です。また、歴史の授業ではなかなか扱われない、町や村の小さな伝統、お国柄を知ることが出来ます。
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優しめの文章なので、あまりエッセイに馴染みのない人にもおすすめです!
ウクライナってどんな国?
本作の特徴について書く前に、ウクライナという国がどの様な国か、大雑把ですが解説します。
ヨーロッパ東部、黒海沿岸に位置するウクライナは、北部のポレーシエ湿地、東部にはドネツク丘陵、西部にはカルパチア高地が位置し、中部から南部にかけて平野が広がります。ウクライナの平野は肥沃な国土に覆われ、ヨーロッパでもっとも肥沃な土地とも言われています。それがゆえに、ウクライナは古来から様々な民族の争いの場となってきました。
およそ紀元前32000年頃の旧石器時代の文明が見つかり、紀元前3000年頃には青銅器文明が発達していたとみられる大変歴史が古い国です。紀元前8世紀頃になるとスキタイ人などの鉄製武器を扱う遊牧民族が力を持ち、6世紀から7世紀ごろには現在のロシア、ウクライナ、ベラルーシなどを構成する東スラブ人が進出することになります。その後キエフ公国と呼ばれる国がウクライナの地で栄えますが、13世紀には「タタールのくびき」とも呼ばれるモンゴル帝国の支配を受け、14世紀になるとモンゴル帝国の支配から脱却するも、以降数百年ポーランド、リトアニア、ロマノフ朝ロシア帝国、ソビエト連邦など時の大国による支配を受け続けるなど、過酷な歴史を歩んできた面を持ちます。
作品の特徴
ここからは、本作の前半部、後半部に分けて特徴を解説していきます。
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前半部のテーマは「愛情」です。
この作品には様々な形の愛情が現れます。故郷への愛情、自分の宝物への愛情、異性への愛情・・・。そしてそれらの愛情をはっきり表現しないのが本作品の、というより詩やエッセイの特徴ですね。現代の恋愛小説やドラマのように、はっきり「好きだ」と伝えるシーンはほぼありません。死んでから好きな人にもらったネックレスと一緒に埋葬されたり、離れ離れになってしまった婚約者に生活費を送金し続けたり、言葉にはしないけれどお互い好きなんだな、と想像できるシーンがたくさんあります。
お互い想いあい、それをあえて言葉にしない「奥ゆかしさ」が実にいい。こんな恋愛をしてみたいものですね。
後半部は前半に比べてテーマが少々複雑になりますが、一言で表現するなら「生き方」になるでしょう。
先述のようにウクライナはソビエト連邦に代表されるような時の大国に支配されてきた歴史を持ち、その過程で伝統文化やウクライナ語が失われたり、チェルノブイリ原発事故に代表されるような過去に悲惨な出来事を経験しました。
そんな中で、ウクライナの伝統的な絵画や歌を守ろうとした人、貧しい村から猛勉強して医者になった人、空を愛するが故にソビエト連邦軍のパイロットになった人、いろいろな生き方が紹介されています。どれも違う生き方ですが、共通しているのは好きな物への「情熱」。前半部の「愛情」というテーマと共通するものがありますね。好きな事、好きな物を生きがいにできることがどれほど素晴らしいか、この作品はそんなメッセージをそっと伝えてくれます。
まとめ
今回はいかがだったでしょうか?
情勢はいまだ不安定ですが、豊かな自然、美しい建物、魅力的な文化を持つウクライナは一度は訪れる価値のある国ではないでしょうか。皆さんもぜひ、本作品を通じてウクライナについて考えてみてください。
最後に、ウクライナに一日も早く安定した日々が戻るよう、お祈り申し上げます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!
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