【幕末小説 不朽の名作】~ 燃えよ剣 ~

時代劇

今回は、幕末小説と言えばこれ!という作品、 『燃えよ剣』(作:司馬遼太郎、新潮社)を紹介します。

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2021年10月には岡田准一さん主演の映画も公開され、話題になったことで覚えていらっしゃる方も多いでしょう。一方で、映画に比べて原作小説は週刊文春で連載されていたのが昭和37年(1962年)11月から昭和39年(1964年)3月、刊行も昭和39年からとかなり昔の作品であり、現代の若年の方はあまり読んだことが無いかもしれません。なので、今回は『燃えよ剣』の魅力をなるべくわかりやすくお伝えできたらと思います。

作品のあらすじ

武州(武蔵の国、いまの東京都近辺)の百姓の子供、土方歳三は生来の喧嘩っ早さとそれに似つかわしくない統率力を持って、同志である近藤勇、沖田総司らとともに京の都へ上り、幕末最強の戦闘集団「新選組」を結成する。

池田屋事件を皮切りに禁門の変、鳥羽伏見の戦いと幕府軍として転戦し、新選組が解体されて朝敵と成った後も会津若松、そして函館五稜郭へと戊辰戦争を戦い続ける。稀代の剣士にして軍人、戦の天才が最後に見る光景は ー。

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新選組は漫画やゲームの題材になることも多いですが、『燃えよ剣』は実際の戦闘時はもちろんのこと、新選組結成までの紆余曲折や新撰組隊士の日常なども丁寧に描かれています。戦闘シーン以外も濃厚に描かれていることで、戦闘時の迫力がより引き立てられています。『燃えよ剣』は土方歳三という人間の人生を描いた伝記とも言えるでしょう。

土方歳三の人間像

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土方歳三と言えば歴史好きにはおなじみ、「鬼の副長」ですね。ひたすら新選組の発展のために働く、自他に非常に厳しい人間として知られていますが、この作品でもう一つ見られる土方の大きな魅力、

それは「思慮深さ」でしょう。

土方は先頭に立って人を引っ張るよりは、リーダーのサポート役、No.2として力を発揮するタイプの人間だと言えます。新選組をより大きな組織に、より活躍できる組織にするにはどうするべきか _。土方の言葉は局長・近藤をしばしば驚かせ、作中でも「この歳三という男は、まるで自分を驚かせるためにいつもそばにいるように思われた」と書かれています。

肉体派が多い新撰組内で、いかにして新選組を「組織」として維持し、成長させていくか、土方は常に先を見据えて行動していたいわゆる「先見の明」がある人物だったと言えます。後の函館五稜郭の戦いでも土方は参謀として大いに活躍します。剣客集団新選組という「軍隊」でも、函館政権という「政府」でも活躍できた土方は、思慮深さに加えて柔軟性も併せ持つ、組織には欠かせない人材でした。それだけに、函館戦争で戦死してしまったのが個人的にとても残念です。陸軍でも、警察でも、土方なら新政府内でもきっと活躍できていたでしょう(実際新政府内で活躍している元新選組隊士は結構います)。それでも最後は「武士」として戦って死ぬ道を選びました。この思慮深さと愚直さを併せ持つ人間像が、土方の最大の魅力なのではないかと思います。

作中の土方歳三はとにかくカッコイイです。それこそ、男が惚れるほどです(笑)。

読みやすさ

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「歴史小説はとっつきにくい」と思われる方も多いかと思います。それは作中の語彙が難しい、当時の人間関係が理解しにくい、など理由は様々あるかと思いますが、個人的にはあまり気にしなくてもいいと考えます(とはいえ何度も出てくるような語彙はたいてい重要な言葉です。知らないままだと物語の展開についていけなくなるようであれば、ネットの辞書などで調べておきましょう)。

歴史小説最大の魅力、それは「人」を読むことです。登場人物が何を考え、どのように行動し、そしてどのように死んだのか ー。その人物の生きざまを知って共感できるのが、歴史小説の醍醐味です。

「それが難しいんだよ!」と言われる方もいるでしょうが、そのような方にこそ司馬遼太郎作品、とてもおすすめです。特に『燃えよ剣』は他の歴史小説に比べてキャラ付けがとても上手く、登場人物の特徴が大変抑えやすい作品となっています。現在の「土方歳三」像はこの作品によって作られたと言ってもいいでしょう。

「歴史小説って難しそう」と思っている方こそ、是非手に取ってみてください。土方をはじめとする登場人物のカッコよさも相まって、『燃えよ剣』の読みやすさは素晴らしいです。

まとめ

今回はいかがだったでしょうか?前項でも触れたように、『燃えよ剣』は歴史小説に苦手意識がある人にこそ、是非手に取っていただきたい作品です。読みやすさに加え、剣に青春を捧げた志士たちの生き様は憧れすら抱いてしまいます。

作中の土方歳三はメチャクチャカッコいいです。「こんな風に生きたい」と思えるような人間に出会える機会は人生何度かあるでしょうが、僕にとっては確実にその一人ですね。読み終わったらきっと歴史小説に対するハードルが大幅に下がると同時に、抜け出せない歴史小説沼にハマっているでしょう。司馬遼太郎作品はこのほかにいくつかあるので、是非そちらも読んでみることをお勧めします。

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最後まで読んでいただきありがとうございました!

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